伝統織物【久留米絣(かすり)】

伝統織物【久留米絣(かすり)】

宮田織物は、久留米絣の
織元として創業しました。

現在、宮田織物の製品は
オリジナルの布地「和木綿」が中心です。

しかしながら、
久留米絣の織元としてはじまり、
現在もデザインの根底には、
伝統の久留米絣がイメージとして流れています。

だからこそ、久留米絣を
部分的に製品にあしらう事も多いのです。

ここでは、その久留米絣のお話をいたします。

久留米絣 くるめかすり/くるめがすり

久留米絣をご存じですか。
天明八年(1788年)
筑後国久留米通外町(現久留米市)に
生まれた井上伝さんが創始者です。

その魅力はやはり、
藍色の美しさ、
織りの意匠の巧みさ、
そしてなんといっても着るほどに増す、
その風合いではないでしょうか。

「久留米絣は水をくぐるごとにしなやかに肌になじむ。」

久留米絣を愛用される方が
おっしゃった言葉です。

また、久留米絣でものづくりされる方は、
どんな小さな端切れでも捨てられない、
と云います。

時を超えて慈しまれ、愛される久留米絣・・

久留米絣には、
重要無形文化財指定という芸術性もあります。

創始者井上伝さんの肖像画からしのばれるのは、
きりりとした意思の強さ、そして暖かさです。

伝さんのそのひととなりが、
久留米絣に息づいていている。

だからこそ、芸術性がありながら
とりすましていない普段着の魅力に
あふれているのでしょうか。

厳選された徳島産の藍で心を砕いて染め上げ、
丁寧に手で織り上げる。

久留米絣の「染」「織」の意匠は、
二百年の時を経て今に息づいています。
そう、伝統の技でこそ生み出される美です。

久留米絣の制作工程

  1. 柄作り(がらつくり)
    絣のデザインをイメージしながら、図案を起こします。
    経験と熟練が必要な大切な制作過程です。
    作者の感性がひときわ際だつところでもあります。
  2. 絵紙(えがみ)
    起こした図案に合わせて経緯(たてよこ)の配分数を決め、
    その寸法を経は羽数(はかず)、
    緯は行数(いきすう)で記入していきます。
    この時、下絵を兼ねて書くこともあります。
  3. 経尺つくり(たてじゃくづくり)
    絵紙に基づいてものさしを作ります。
    竹ひごに墨で括る巾を印付けしたものさし、これが経尺です。
    模様に合わせてそれぞれの尺を作って使用します。
  4. 緯尺つくり(よこじゃくつくり)
    絵糸巾に合わせて竹尺を作ります。
    絵紙より割り出した筬羽(おさば)を基準に一巾、
    一パターンの柄を竹尺に写し取ってものさしを作ります。
  5. 下絵(したえ)
    絵紙に合わせて緯の縮み具合を考慮しながら
    絣模様に書き直していきます。
  6. 絵糸書き(えいとがき)
    絵糸は緯糸をくびるときの種糸となるものです。
    まず、下絵を絵台にのせて筬羽に糸を張り、
    一模様づつ織り巾に合わせて糸を張っていきます。
    さらに張られた糸を、絵にしたがって緯糸の絣になる部分に
    指先で糸を回転させながら筆で丹念に墨付けします。
    久留米絣の絵糸書き
  7. 経はえ(たてはえ)
    柄模様に合わせて絣糸と地糸の糸数を割り出して、
    大枠に巻き取ります。
    整経(せいけい)ともいわれる工程です。
    久留米絣のたてはえ
  8. 緯はえ(ぬきはえ)
    絵糸紙で墨付けした種糸を一本にしてこれを整経機に張り、
    柄模様一つ一つの緯糸の長さを決めます。
    整緯(せいぬき)といわれる工程です。
  9. 糸たき(いとたき)
    糸を強化し、不純物を取り除くために
    苛性ソーダ水を入れた水で煮沸します。
    精錬(せいれん)といわれる工程です。
  10. 晒し(さらし)
    晒し粉の上澄み液に重炭酸ソーダを加えた溶液で
    糸を漂白します。染め上がりを美しくするための工程です。
  11. 糊付け(のりづけ)
    糸の乱れを防ぐために薄い麩糊(ふのり)をつけ、
    天日干しします。
  12. 手くびり
    柄模様の区分に分けられた経糸を均等に張っていきます。
    この経糸に経尺をあてながら、くびる部分に墨を付けて
    粗苧(あらそう=麻の一種))でくびります。
    経糸は絵糸といっしょに整えていますので、
    絵糸の印部分を経糸と同様にくびります。
    微妙な手際が仕上がりに影響しますので大変な年期と熟練を要します。久留米絣の手くびり
  13. 藍建(あいだて)
    徳島産の上質な藍(すくも)を使用します。
    1週間から10日かけて発酵(藍建)させます。
    舌でなめて発酵状態を確かめる時も。
    およそ3週間たつと、完全に発酵して染色出来るようになります。
    1日に1度の攪拌は、大切な管理工程です。
  14. 藍染(あいぞめ)
    濃度の異なった8、又は12本一組の藍瓶で、
    くびった糸を染色します。
    染めるときは下藍、中藍、上藍と、
    濃度の低い藍から高い藍へ順番に連続して染め上げます。
    染めた糸枷(いとかせ)は、その都度よく絞り、たたきます。
    これで、くびりきわが良く染まるように糸を膨らませ、
    さらに空気に触れさせて、藍の酸化による染色を助けるのです。
    この力加減が経験を要します。
    久留米絣の藍染
  15. 水洗(すいせん)
    2時間くらい水につけて、
    藍染の時についた不純物と余分なアクを抜きます。
  16. 絣解き(かすりとき)
    水洗いした糸を張り、糸が乾燥しない内にくびった粗苧を
    手早く解きます。乾燥するとくっきりした白さが出ないのです。
  17. 水洗・漂白(すいせん・ひょうはく)
    絣解きの後、一昼夜水につけて晒します。
    藍色がさえ、白さが際だちます。
  18. 糊付け・乾燥(のりつけ・かんそう)
    緯糸に薄糊をつけて天日に干し、乾燥させます。
    糸の毛羽立ちや乱れを防ぐためです。
    この後、経糸と緯糸に工程が分かれます。
  19. 経割(たてわり)
    柄合わせの事です。
    経糸の、それぞれの糸篠(いとしの)を
    柄模様に合わせながら束ねていきます。
  20. 糊付け・乾燥(のりつけ・かんそう)
    経糸にむらなく生麩糊(しょうふのり)をつけて水を切り、
    温かい内に素早く糸を張って乾燥させます。
    糸毛羽や絣乱れ、糸乱れ等を防ぐと共に、製織をしやすくするためです。久留米絣の糊付け5
  21. 割り込み・筬通し(わりこみ・おさとおし)
    絵紙で割り出した糸数にしたがって、地糸と絣糸を並べます。
    並べた糸を一方から筬羽を一つ一つ開けながら、
    一羽(ひとは)に2本ずつ通していきます。
    久留米絣の割り込み
  22. 経巻(たてまき)
    経糸を巻く巻箱を巻経台(まきたてだい)に固定し、
    経糸の先を結びつけます。
    これを二人一組になって、
    一人が巻き取り、一人が張りながら、
    模様を確認しつつ丁寧に巻き取っていきます。
  23. 綜絖通し(そうこうとおし)
    あぜかけともいいます。巻箱に巻き取った糸を、
    筬羽から一羽(2本)ずつはずし、
    上下に分かれた綜絖(ヘルド)に1本ずつ分けて糸を通します。
    これによって経糸は奇数と偶数番の糸が離れ、
    綜絖部の上下運動で開口部分が出来ていきます。
  24. 機仕掛・筬通し(はたしかけ・おさとおし)
    綜絖及び筬に通した糸を手織りに備えて手ばたに仕掛けます。
  25. 緯割(ぬきわり)
    絵糸を取り除き、糸篠(20本単位)に割り、長く伸ばしていきます。
  26. 枠上げ(わくあげ)
    20本の緯糸を六~八角形の緯取枠(ぬきとりわく)に
    一本ずつ巻き取ります。
    久留米絣の枠上げ
  27. 管巻(くだまき)
    緯取枠から杼(ひ)に入れる竹管に巻き取ります。
    巻かれた20本の糸を1本ずつ、木綿車をまわして巻き取っていきます。久留米絣の管巻き
  28. 手織り(ており)
    織り機は投杼機(なげひばた)です。
    まず、杼で緯糸を通し、経糸の柄模様に緯糸を合わせます。
    さらに筬を手前の方に力強くトントンと打ち込む、
    この作業を繰り返しながら、丹念に織っていきます。
    綜絖の高さ、足の踏み加減、筬の打ち具合などによって
    製品の善し悪しが決まりますので、
    優れた製品作りには相当の経験と技術が必要になります。
    久留米絣の手織
  29. 湯のし・乾燥(ゆのし・かんそう)
    できあがった織物を湯通しして、竿にかけて日陰干しします。
  30. 整反(せいたん)
    織物を尺台にのせ、はさみなどでふし等を切り取ります。
    さらに、巾や仕上がりを調べながら所定の長さに製反します。
  31. 検査(けんさ)
    できあがった製品は、久留米絣協同組合で検査を受け、
    制作者が責任証紙を反末に貼付します。

(資料は久留米絣協同組合様よりご提供いただきました)

久留米絣の染色工程「くくり糸の糊付け」

この写真は、久留米絣の
染色工程【くくり】という作業のために
必要なくくり糸を手作業で作られているところ。

寒い中、ストーブ一台で、
手作業で糸車から木の駒に
糊をつけた糸を巻く作業は、まさに職人技。

年期の入った作業台や、
ご夫婦の息の合った作業に、圧倒されます。
(久留米絣広川町協同組合様にて)

久留米絣 くくり工程「経糸」

久留米絣(かすり)くくり写真

この写真は【くくり糸】を機械にセットし、
久留米絣の図案に基づき、
たて糸の染めたくない部分に
【くくり】と呼ばれる作業をされているところ。

奥さまが手作業で作られた【くくり糸】を、
丁寧に機械にセットし、
ひとつひとつ糸の調子や、
くくり糸の残りなどを見ながらの
休むひまもない作業。

【くくり】作業仕上がり後のたて糸がこちら
久留米絣(かすり)たて糸

この生成り色でくくられた部分が、
染色の際に染まらず、
織り機で織り上げた時に、
素敵な柄となって現れてくるのです。

さらに湿度や季節なども
作業状態に変化をもたらすそうです。
(久留米絣広川町協同組合様にて)

久留米絣 くくり工程「緯糸」

経糸・横糸を染色する前のくくりの機械は、
経糸・横糸それぞれに有り、
緯糸のほうが、経糸より
多くの本数を一度に仕上げることができるそうです。

▼くくり後の写真がこちら。糊のついた一本

(久留米絣広川町協同組合様にて)

現在の宮田織物の久留米絣への取り組み

そして、現在、宮田織物では、
久留米絣の織元である「下川織物」と共同開発し、
新しい久留米絣への取り組みを始めています。

Simogawa Orimono × Miyata Orimono
【新作入荷】やわらかな肌ざわり
久留米絣ストール

重要なコンセプトは、「肌にふれて、ここち良い」

久留米絣は、一般的に通年使用できる厚みの木綿織物。

水をくぐると、ハリのある風合いから、
やや柔らかな風合いにはなるものの、

ストールとして首に巻くには、
もっと、やわらかく優しい風合いにできないか・・

1948年創業。伝統の久留米絣を守りつつ、
着物地としてだけでなく
洋服地としてなど進化をし続ける久留米絣を織る下川織物。

1913年創業。久留米絣の織元として始まり、
現在は風合いと着心地にこだわりを持つ和木綿を織る宮田織物。

2社で共同開発

やわらかく、ふんわりとした
心地よい久留米絣ストールができました。

大切な方への贈りものギフトにも喜ばれております。

久留米絣のストールは、
工場直営オンライン通販サイト
および、直営店舗などでお買い求め頂けます。